東京高等裁判所 昭和44年(ラ)969号 決定 1970年2月09日
抗告人 山田貞義
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の理由は、別紙記載のとおりである。
抵当権に基づく競売手続において、利害関係人は競売期日の通知を受ける権利を有するとともに(競売法第二七条第二項)競落許可決定に対し即時抗告をなしうるところ(競売法第三二条第二項、民事訴訟法第六八〇条参照)、右利害関係人の範囲は競売法第二七条第三項各号に列挙の者に限られている。抗告人が同項第一、二号ならびに第五号に該当しないことはその主張自体から明らかであり、また、抗告人主張の本件競売物件に対する賃借権が記録上登記簿に登記(同項第三号)されているものと認めるべき資料はなく、さらに、同項第四号所定の「不動産の権利者としてその権利を証明したる者」とは、当該関係者においてその権利を証明するとともに競売裁判所に対しその旨の届出をした者であることを要するところ(民事訴訟法第六四八条第四号参照)、本件記録によれば、執行官の賃貸借取調報告書には抗告人主張の賃貸借契約の存在することの記載があり、同報告書には右賃貸借契約設定の契約書も添付されていることが認められるけれども、抗告人より競売裁判所に対しその旨の届出をなしたことはこれを認めるに由ないところである。したがつて、抗告人に対し競売法第二七条第二項による競売期日の通知をする必要がないのであるから、抗告人の主張は採用できない。
その他、本件記録を精査するも、原決定を取り消すべき違法の点は見出しがたいから、本件抗告は理由がなく、よつて、主文のとおり決定する。
(裁判官 青木義人 高津環 浜秀和)
(別紙)抗告の理由
一、抗告人は本件競落物件を賃借して居り自動車解体を業として居りますが、本件競売期日を賃借人である抗告人に裁判所は通知をしなかつた。競売期日の指定があれば当然買受手続をして期日に参加出来たものを、終に見逃して仕舞い今後の営業に大変な支障を来たすもので、裁判所の執つた手続は違法なものと言わなくてはならぬ。